第11話 幽霊アイドルとZ世代サムライ女子の共演:ミーちゃんの願い

第一章:幽霊アイドルとの遭遇


「ソム、今日のライブ超楽しみじゃない?!」


瑠奈は友達のソムに興奮気味に話しかけた。二人は今、バンコクの巨大なアイドルグループ「ファンシースターズ」のライブに向かっていた。


「でもさ、あの噂、知ってる?」ソムが突然、真剣な顔で囁いてきた。


「え?噂って何?」


「ファンシースターズの元メンバー、ミーちゃんが事故で亡くなって、今でも彼女の幽霊がステージに現れるんだって…。」


「なにそれ、怖すぎ!」瑠奈は笑って誤魔化そうとしたけど、背筋に冷たいものが走った。

ライブ会場に入ると、熱気と音楽が二人を包み込んだ。大歓声に混じって、なんかゾクッとする不思議な雰囲気が漂ってる気がする。


「うわっ、やっぱアイドルってすごいな…。」瑠奈は心の中で感心しつつも、ソムの言葉が気になって仕方がない。


「ちょっと待て、お前、なんでそんな噂にビビってるんだよ。」


突然、瑠奈の頭の中に山田長政の声が響いた。彼は瑠奈の前世、戦国時代の武士であり、今世では瑠奈の脳内に住み着いている存在だ。


「いやいや、怖いもんは怖いっしょ!」瑠奈は心の中で反論する。


「俺は信じねぇ。そんなもの、この剣で一刀両断してやる!」


「長政さん、何でも刀で解決しようとしないでよ…。」瑠奈は呆れつつも、会場の異様な雰囲気に緊張していた。


第二章:ステージ上の異変

ライブが始まった。ファンシースターズのメンバーたちが次々とステージに登場し、会場は大歓声に包まれる。けど、ふと一瞬、ステージに見覚えのない影が見えた気がする。


「今、誰かいたよね?」瑠奈はソムに確認した。


「え、何のこと?」ソムはまったく気づいていない様子。


ライブが進むにつれて、瑠奈は何度もその影を見るようになった。ある曲の間奏中、はっきりと白いワンピースを着た女の子が立っていたのだ。


「ちょっと待って、あれ、ミーちゃんじゃない?」瑠奈は鳥肌が立った。


「バカバカ、お前の気のせいだ!」


長政は瑠奈の恐怖を一蹴しようとしたが、瑠奈の視界から消えないその影は、ますますリアルに感じられた。


第三章:幽霊との対決

ライブが終わった後、瑠奈はいてもたってもいられず、裏口からスタッフに紛れてステージ裏に忍び込んだ。


「何してんの、瑠奈?!」ソムが小声で叫ぶが、瑠奈は振り返らず進む。


「ミーちゃんがいるかもしれないんだよ! 確かめないと!」


「ホントにバカだよ、お前!」


頭の中で長政も呆れながらも、なぜか不敵な笑みを浮かべているような気がした。


ステージ裏は薄暗く、廃墟のように静まり返っていた。そこで瑠奈は、確かにミーちゃんの姿を目撃した。彼女は、悲しそうな表情を浮かべながら舞台袖に立っていた。


「ミーちゃん…?」瑠奈は恐る恐る声をかけた。

彼女はゆっくりとこちらを向き、その瞬間、瑠奈の心臓は凍りついた。彼女の目は無機質で、何かに囚われているかのようだった。


「逃げるか、戦うか、どっちにする?」長政の声が冷静に問いかける。


「戦うって、どうやってよ!」瑠奈は内心パニックになりながら答えた。


「刀は無いが、お前には前世の記憶があるだろう。」


「いやいや、記憶で幽霊倒せるわけないじゃん!」


だけど、ミーちゃんはゆっくりとこちらに近づいてきて、瑠奈の体は勝手に動き出した。


突然、大きな音が響き渡った。


瑠奈は顔を真っ赤にして、床を見つめた。なんと、緊張のあまり大きなおならをしてしまったのだ。


「な、なんだよ、その音は…!」長政も思わず声を上げた。


ミーちゃんは、瑠奈の予想外の行動に一瞬戸惑ったような表情を見せたが、すぐに再び悲しそうな顔に戻った。


「…。」瑠奈は恥ずかしさのあまり、地面に顔をうずめたくなった。


第四章:長政の力、炸裂!

突然、私の体は軽やかにステップを踏み、幽霊の動きをかわしながら、華麗に舞った。まるで舞台上の剣舞を踊るように。長政の剣術が私の体に宿り、幽霊との「戦い」が始まったのだ。


「なんで私、こんなことできんの?!」自分でも信じられない動きに驚きながらも、私は幽霊アイドルの攻撃(?)を次々と避けた。


「いいぞ、瑠奈!その調子だ!」長政は興奮気味だが、私はもう限界。どうやったらこの状況を終わらせられるのか…


その時、ミーちゃんが悲しそうに一言、「…私は、みんなを守りたかったの。」と呟いた。


第五章:和解と救い

私は立ち止まり、彼女の目をじっと見つめた。幽霊なんて信じられないけど、この子は何か訴えたいのだと感じた。


「守りたかったって、どういうこと?」


ミーちゃんは、事故の原因がファンシースターズのマネージャーの圧力によるものだと告白した。彼女は、メンバーを守りたかったのに、自分が犠牲になったのだという。


「それなら、私たちがその真実を伝えてあげるよ。」私は優しく語りかけた。


「ありがとう…。」ミーちゃんは微笑み、ゆっくりと姿を消していった。


エピローグ:長政の教え

「やっぱり、剣で戦うだけが武士じゃないんだな。」長政が珍しく感慨深げに言った。


「いや、最初っからわかってたなら、言ってよ…。」私は深くため息をついた。


「これでまた一つ、お前も成長したな。次の挑戦は何にする?」


「挑戦って、幽霊アイドルと戦うのでもう十分だよ!」


私は頭の中で長政に突っ込みながらも、また一つ成長した自分に少しだけ自信を持つことができた。


これが、Z世代サムライ女子の、ちょっと笑えるけどちょっぴり切ない日常の一幕だ。

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