第4話 電柱

ある日、一人の男が電柱を見て、こう思った。

「この中に、宇宙人がいる。今は潜んでいるが、時が満ちたら一斉に出てきて、地球を征服するのだ」

確信した男は、有り金をはたいて専用のコンクリートカッターを購入し、地上の電柱を次々に切断、粉砕していったのである。当然その中に宇宙人はいなかったが、それを見て男は、

「今はいないが、やがて宇宙人の隠れ家となるだろう。今のうちに予防するのだ」

と言い、破壊を止めなかった。

男の奇行に面白半分で、あるいは大真面目に同意する者は増えていき、やがて警察も手に負えなくなっていった。そして結局、男はすべての電柱を地球上から排除したのである。

「あれは何だ。あれも排除だ」

次の男の標的は、樹木になった。電柱と同様、来る侵略から地球を守るため、男は脇目も振らず、木を伐採していった。



遠い宇宙の果ての星では、その住人たちが険しい表情で話し合っていた。

「かねてより計画していたあの星への侵略は、当分延期しよう。我々には、分が悪そうだ……」

彼らは電柱や樹木が徹底的に破壊されていく地球の様子を見て、その細長い円柱状の身体を震え上がらせていた。

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