第2話 戦争

ある銀河に浮かぶ「くだもの星」で、突如戦火が上がった。


数年にわたる世界規模での干ばつを受け、大陸の中央に位置する帯水層における水資源の消費が加速し、そこに隣接するバナナ王国が水域の独占を目的として、ついに軍事行動を起こしたのである。長年の係争相手であり近隣国家のりんご共和国がそれに対抗して軍を派遣。正式な開戦布告を通し、両国の全面戦争となった。

バナナ王国はその南方に位置するブドウ連邦、キウイ公国と連合を組み、一方りんご共和国はなし合衆国と軍事同盟を結び、装備、資金の協力を取り付けた。


開戦当初、りんご共和国はバナナ王国軍の高さを活かした戦いぶりに苦戦したが、持ち前の硬さを発揮し、消耗は抑えられた。水分含有量で不利なバナナ兵士は次第に元気をなくし、それを見たキウイ公国は連合を見捨て、単独で同盟側と講和条約を結び、翻って連合側に対し宣戦布告に出る。加えて、かねてより分裂気味であり内政が紛糾していたブドウ連邦では、戦争負債の増加に伴い国内で反乱が頻発し、中央政府が倒され、ついに戦線から離脱した。


なし合衆国による本格的な実質戦力の派遣開始と大量破壊兵器の投下、連合の空中分解、いくら王国の滅亡等々を経て、ついにバナナ王国が同盟側に対して無条件降伏を行い、戦争は終結。係争地である取水源はすでに干上がり、荒野と化していたので、大量の果物が海を隔てた大陸にあるなし合衆国へ移住、亡命した。


後世の歴史家たちは、様々な要因が考えられるがバナナ、キウイ、ブドウ連合側の最大の敗因は、その身体の柔らかさであった、という。

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