それぞれの形

 あれから結構日数が経ち。

 日中も寒さを感じるようになってきた11月中旬


 ふむ、音無君に彼女が出来た事で音無君の日常が少し変わった

 恋人と過ごすとはどういったものなのか私は気になる。


 私はまだ恋人は作った事が無い

 急いでなかったのもある。漠然とその内誰かとーって気分でいたから。

 しかしあんな風に変わるのなら恋人がいる事で変わった日常を見てみたい

 そんなこんなで放課後


「という事でやってきました」

「それを理由にこっちきたの・・・?」

「個人的に一番変わったの今古賀さんだし」

 前はすかした態度でやっかみを買ったが

 大海君と恋人になった今は表情の変化が乏しいだけの子

 やっかみが無くなったのだ。一番の変化と言っていいだろう。

 あと友達の惚気が気になる。

「えー変わった所といえば、俺中間テストの点数60点取れたことか?」

「前は赤点ぎりぎりでしたからね」

「おぉ、凄い変わりよう」

 赤点から完全脱出は普通に凄い。

 今古賀さんは頭が良いから

 付きっ切りで相手してくれるのなら学力もモチベーションも上がるんだろうな

「まここが俺が理解したらすらすら解けるって言ってくれたからよ」

「まここ?」

「『いまこがたかこ』可愛くしようとしたら、まここかなって」

「ほう・・・ですってまここさん?」

「バカ!バカ!バカ!」

 今古賀さーん、そんな顔真っ赤にして罵倒しながら叩いても

 じゃれついてるようにしか見えませんよー?と

 叩いてる力も弱いし、大海君もわりぃわりぃと笑って受け入れてる。

 クールな友達である彼女の意外な一面を見れて満足。

 ふむ、ここは良い関係だなー

「他に恋人っているのかな」

「2-C、今なら美術室にいるだろうから行ったら!他は2-B!」

「はーいはいお邪魔虫は退散しますよーだ」

「バカ!バカ!」

 罵倒の語彙力が無いし顔真っ赤にして言っても

 ただただ可愛いとしか言えませんよ?まここちゃーん?

 と煽ったら余計怒らせそうだから心の中で呟く。


 ふむ、美術室か。この時間美術部が部活動してると思うが・・・

 まあ見学くらいは良いか、と思ったらちょっと離れた所で二人で何か創作・・・

 いや、男の子は眺めてるだけで、描いてるのは七瀬ななせさんじゃん。

 なるほどね、この二人か

 美術部から離れてるし突撃しよっと

「お邪魔しまーす」

「あら珍しいお客さん。いらっしゃい結月さん」

「いらっしゃーい」

「何描いてるのー?」

「心の赴くままによ・・・」

 ちょっとゾっとした。恍惚とした表情で言わないで欲しいな七瀬さん。

 しかも描いてる絵が怖いんだけど。

 何この霧に包まれた人間の絵

 けど心の赴くままにってこれ描きたくて描いてるのか・・・

「わ、私絵心が分からないけど、これどういうテーマ?」

「霧」

「霧でこうなるの・・・?」

 わざわざ人を描く必要性あった・・・?

 しかもテーマ通りに霧の様になってて

 ぼやけてて表情も分からないし女の子なのか男の子なのかも分からないし

「えっと・・・男の子の方」

皐月さつきで良いよ」

「皐月さん、これ見てなんて思ったの?」

「そうだね。いつか消えるものって感じたよ」

「さすが信敢しんかん君・・・」

 うっとりした表情・・・べた惚れしてるな七瀬さん・・・

 しかしいつか消えるもの・・・

 そういえば音無君の言葉にするとそれだなって思った

「皐月さんはこの絵が好きなの?」

「正確には颯描はやかさんの描く世界にのめりこんでるね」

「だから誰よりも一番に見せたくて恋人になってもらったのよ」

 キャーと両手で頬を抑えながらぶんぶんしてる七瀬さん。

 おおーこんな所で惚気を聞けるとは。

「私は感性が分からなかったなー・・・ごめんね」

「いいよいいよ。怖いから描くなって言ってきた部員達よりよっぽど誠実」

 あっぶね・・・口に出さなくて良かった。

 ただなるほどね、皐月さんの為に描いてるのか

 ある意味感性が合致した思い合った恋人で良い関係だな

 こういう関係性もあるんだな、参考にしよう。

「じゃあ見学も済んだし次行ってくるよー」

「いってらっしゃーい」

「また見に来てねー」

 怖いもの見たさにまた来るかもしれない。

 解説役の皐月さんもいる事だし


 さて2-Bだが・・・

 うん、言わなくても分かるわ

「悠・・・」

「雫・・・」

 なにあの絶対領域。

 あそこだけ露骨に人がいないんだけど

 関りたくねぇ・・・

 と思ったら相葉さんいるじゃん

「相葉さん、ナニコレ・・・」

「あら結月さん、何って幼馴染カップルによる極甘の領域展開」

 ほう、幼馴染カップルとは長い付き合いだな

 長い期間を良好・・・いや、昇華させていくのは凄いな。

 しかしここまで周りに影響を及ぼす甘い空気を作るって・・・

「ちなみにアレ10年前からずっとらしいぜ」

 隣にいた男の子が答えたって、え?

「・・・小学1年辺りから・・・?」

 ごめん、その長い関係続けるの色んな意味で凄いわ

 ただこれ参考にしていい物じゃないな・・・


 さて原点に返って音無君と伊織さん

「――――わけ」

「なるほどねー」

「・・・」

「ん、あぁごめんね。そしたらこれとか——」

 なんだろう、あまり良い感じがしない

 あれ、音無君ってキャッチボールちゃんとしてた気がするけど

 今のなんか下手くそだったな。

 内容聞いてなかったから分からないけど、言いにくい内容だったとか?

 ま、全てが理想的な関係とはいかないか


 そう思おう。

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皆は貴方を優しいと言うけれど のんびりした緑 @okirakuyomu

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