5000年後……?
私は魔王だ。今からだと約5000年くらい前になるのか。私は人間といろいろ争っていた。しかし、魔王になってから200年くらいで勇者とかいう人間に封印されてしまった。どうせ人族だからと油断していたらしくじってしまった。
あいつは許さない。いつかこの封印空間から出て同じ目に合わせてやる。
とか思ってた。めっちゃやり返そうとか思ってた。
なのになにこれ。
やっと封印から出れたのに、六年くらいしか経ってないって思ってたのに。
なんだよ魔暦は知らないって。なんだよ全共歴って。
ーー夢か?夢なのか?そうか夢か。
そっかそっか。
いやー良かった夢で。てことは私はまだ封印空間の中ってことか。その中で夢見てるってことか。ならさっさと起きて封印空間から出ないと、なっ!
ッパァン!!
私は自分の両頬を思い切り叩いた。
とても痛い。めっちゃ痛い。
けどこんな痛いんだからこれで夢から覚め……てないね。
なんにも変わってないね。
うん。
あれ?おかしいな。
確かこうすれば夢から覚めるって聞いたことあったんだけど。
ーーあっそうか。つねるんだ。
私は自分の両頬を思い切りつねった。
めっちゃ痛いな。
けどこれでようやく目が覚め……てないね。
うん。
おかしいな。現実の私は相当爆睡してるのかな。
どうしよこれ。どうすれば目覚めるんだろ。困ったな。早くあの封印空間から出たいのに。
ーーそうか。あの程度の痛みじゃ目覚めないってことか。
よし、じゃあ首でも切ってみようか。どうせすぐ再生するしな。
というわけで、私は自分の首を切った。
落ちる私の生首。灰になる私の生首。そしてまた再生する私の生首。そして目覚めない私…………。
ーーもしかして、いやそんなことないんだろうけど、ってかあってほしくないんだけど。てかあったら困るんだけどさ、もしかして、ここって、夢じゃなかったり、したりして……。
ーーなーんてね!あははははは、はははは、ははは、はぁ……。
……薄々勘づいてたよ。ここは現実だってこと。私は封印空間からゴリ押しで脱出できたんだってことを。
っていうか私封印空間から出る時すごく喜んでたわ。
でもさ、私封印空間に六年くらいしかいなかったんだよ。私だって二千年以上生きてるんだよ。超超超長寿なの。時間は正確にわかるんだよ。一年はこんぐらいだなっていうのがさ。
だからさ、これはおかしいと思うんだよ。
確かに私の経験から言ってることだから誤差があってもおかしくないけどさ、せいぜい誤差13年とかだと思うんだよ。
なのにさ、5000年以上前ってなに?なんでそんな時が経ってるの。
私が封印されてる間に何があったんだよ。
……まっ、考えても仕方ないか。
とりあえずあれだ。
なんか戦いたい。
久しぶりに戦いたい。
やっとシャバに出れたんだからいろいろしたいよね。
という訳で探索しよう。
強い敵と戦うために。
私は森の奥に進んで行った。
森を歩いているとよくモンスターと遭遇する。基本デコピンで倒せることから恐らく低級、良くて中級のモンスターが多いのだろう。
上級以上のモンスターは見当たらなかった。
森に進む道中でモンスターを倒していて思ったのだが、ここには私の知ってるモンスターがいない。
見たことの無いやつらばかりだった。だが私の知ってるやつに似たモンスターもいた。
本当に5000年経ってるのか……?
そんなことを感じ始めていた。
さらに森を進んで行くと、洞窟を発見した。入口はあまり広くない。恐らく深くはないだろうな。
だがこういう場所にこそモンスターは巣を作る。
そう、洞窟は狩場なのだ。
いつもなら洞窟の中に炎を放って終わるんだが、今は夢の中だからな。私の常識が通用しない場合があるかもしれない。もし炎が効かなかった場合、洞窟内のモンスターは私を襲ってくるだろう。
上級以下のモンスターならいいが、もし中に最上級か、可能性は低いがそれ以上がいた場合、そいつは私をありとあらゆる方法で殺しにくるだろう。
そう例えば、仲間を呼んで来たりな。
ここが5000年後の世界だとするならば、何が起きるか分からない。
まあ最上級ごときが私を倒せる訳ないが、仲間を呼ばれると非常に面倒くさい。下手すれば一時間以上はかかるだろう。いちいち雑魚を倒すのもつまらない。
ではどうするか?もちろん特攻だ。奇襲して瞬殺すれば仲間を呼ばれる心配もないというわけだ。
私は洞窟の中へ進んで行った。
洞窟の中はあまり変わっていないらしい。
でこぼこした岩肌の壁やデコボコしてる地面など、私が覚えているものとよく似ている。
この感じ、懐かしいなぁ。
よく洞窟の入り口を潰してモンスターを生き埋めにしてたっけ。たまにドラゴンとか出てきてビビってたこともあったなぁ。穴に落ちたりもしたなぁ。
思い出に耽りつつ、私はさらに奥へ進んで行った。
一時間くらいだろうか。
私は同じ一本道を永遠に歩き続けていた。
……ていうかこの洞窟長いなぁ。
ここまで来ると野生のダンジョンの可能性が出てくるな。でもモンスターがいないな。
ーーあ、そうじゃん。まだモンスターと出会ってない。おかしいな。
ーー罠か?可能性はあるな。モンスター狙いを狙った誘い込みの罠とかがありそう。
だとすれば、私はまんまと罠にハマっている訳か。おそらくこの先に落とし穴かなんかが仕掛けられているんだろう。
いやいや待て待て、長すぎるだろ。
私がモンスターと出会わなかったのもこの先にいるやつが倒したから。そしてその罠を仕掛けているのは多分人族だ。
とか考えてたけどないな。ありえない。
そもそもここは魔大陸。人間は近づくことさえ難しいくらい人間に適さない土地だ。そんなところに人間がいるわけない。
ならここはなんだ?
この無駄に長い一本道、道中にはモンスターもトラップもなく、ただ道があるのみ。
うーん。わからん。めんどくさい。破壊するか。
例えばこう、テキトーな魔法陣に魔力を込めて……ん?
なんだ?地面が揺れて……うあっ!?
突然、全身に浮遊感が走る。
違う。これは……。
「うそ!落ちてるぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
私は穴に落ちていった。
封印から脱出したら5000年経ってた 港颯 @harutorai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。封印から脱出したら5000年経ってたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます