封印から脱出したら5000年経ってた

港颯

プロローグ

 夜、魔王城の城門。


 「なんか最近人間達がまた大規模な戦争したんだってさ。どうしてあいつらは同族同士で争うんだろうな」

 「しょうがねぇよ。あいつらは争わないといけない宿命なのさ。なんせ、数が多いからな。あんだけいたらそりゃ意見がぶつかって争いにでもなるって」


 夜勤の門番二人が世間話をしていた。向かいあって、酒を飲みながら話している。


 「あの〜……ちょっといい?」


 そこに一人の小女が尋ねて来た。見た目は若い人間にかなり近い姿をしている。人間なら同族だと勘違いしてもおかしくない。だが、門番二人は察した。これは人間ではない

と。


そう、彼女は魔族なのだ。


 「んあ?ここは魔王城だぜお嬢さん。」

 「そうだぜ。不用意に近づくと魔王様に消されるぞ」


 門番が追い払うつもりで彼女を脅す。


 「そっか、じゃあこれがやっぱり今の魔王城なんだ」


 小女がつぶやく。門番には聞こえなかったようで、二人とも互いを見て首を傾げている。脅しは通じなかったようだ。


 「いくつか質問したいんだけど、いいかな?」


 女が問いかける。


 門番はまた互いを見て、女の質問に答える。


 「今は魔歴何年なの?」

 「魔歴?魔歴ってあの全共歴(全種共通世暦)ができる前のやつか?あれは2000年くらい前に3952年で幕を閉じたぜ」

 「は?……えっ?…………えっ?」


 小女は何やら困惑しているようだ。


 「わ、私ソフィニア・リリアスって言うんだけど、知ってる?」


 「すまんな、俺たちは魔王様じゃないから、魔族の名前を全部は覚えれてないんだ。ソフィニアってのは聞いたことないな」

 「……あ〜、まあそりゃそうか……」


 少女がつぶやく。


 「えっと、今の魔王って何代目なの……?」

 「俺も詳しくは知らねえが、聞いた話によると今の魔王様は263代目くらいじゃなかったっけな」

 「違ぇよ。264代目だよ」

 「1しか違わねぇじゃん」

 「お前1なめんなよ。はっ倒すぞ」

 「えっウソでしょ」


 少女が唖然として、それでも言葉を発した。


 今の話を冗談として流そうとしている。


 「いやホントだよ」


 しかし突きつけられる現実。


 「ウ……ウソだぁぁぁぁ!!!!!!」


 女は叫びながら走って森の方に行ってしまった。


 「えっ、ちょっ、おーい!……俺何か酷いこと言っちゃった?」

 「いや多分あれは別の理由だな。安心しろお前は悪くない」

 「ほんとか?ありがとう……!」


 絆が深まった門番達だった。

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