第4話 何気ない日常

 エンドロールが終わって、映画館内に電気が付く。


 そして退場案内の館内アナウンスが流れる。


 私達も立ち上がって出るための片づけを始める。

 そこに由乃ゆのが話しかけてきた。


「どうだった?」

「うん、面白かった!」

「でしょ~~!?輝星こうせい君かっこよくなかった!?もう私ずっとドキドキしてた!」


 今日見たのは恋愛映画。

 由乃の好きな輝星って俳優が出るから見たいって誘われて私は着いてきた。


 由乃の「あのシーンが良かった」「このシーンがヤバかった」という感想を聞きながら私達は劇場を出て、映画館入り口まで移動する。


「…なんか実来みく、反応薄くない?」

「そんなことないよ?」

「あ…わかった。実来のタイプはだもんね~?あれ以来、また遠くから眺めるだけなのがショックなんでしょ~?」

「ち、違うって!!何言ってるの!?」

「でもそうでしょ?だから今日の映画を見て…」

「だから違うって!!もう怒った!!」


 私はそう言いながら由乃の脇腹をつつく。


「わ!ちょっ!!ごめんって!!」


 由乃はそう叫びながら逃げてエスカレーターに乗った。


 ここの映画館はショッピングモールの最上階にあるタイプ。

 私達はエスカレーターで下の階へ移動しながら、電源を切っていたスマホを確認する。


 するとお母さんからメッセージが来ていた。


 内容は「下に入っているスーパーでお父さんと買い物してる」「時間が会えば一緒に帰る?」というもの。

 時間は…だいたい30分前。

 それなら…ちょうど終わってるかな?


 ここから家まではバスに乗らないといけない。

 でも、お父さんとお母さんと帰れるなら車に乗れる。

 もちろん由乃も乗せてもらえる。


 私は確認のために由乃に話かける。


「ねぇ由乃?」

「何?」

「帰る前に下のスーパー寄ってもいい?」

「いいけど…何で?」

「お母さんとお父さんが今買い物してるみたいでさ。一緒に帰るかって。由乃も乗って帰らない?」

「わかった!じゃあこのままエスカレーターで下まで行けばいいよね!」


 由乃は小学校からの付き合いで家も近いから、家族ぐるみの付き合い。

 だから、特に何も言わずに賛成してくれた。


 私達は由乃に返事をしながらエスカレーターを乗り継ぐ。

 そして家族のグループに「今下に降りてる」とメッセージを入れる。


 2階から1階へのエスカレータに乗る。

 私は下の広場へと目線を向ける。


 休日の夕方だから凄い人の量。

 でも、私はその中からお父さんとお母さんを見つけた。

 スマホにもちょうど「待ってるよ」というメッセージが来た。

 

 私は由乃に両親を見つけたことを伝える。


 もうすぐ1階に着く。



 そのとき。




 突然、血の臭いが鼻を突く。



 人の叫び声がショッピングモールに響く。



 私は驚いて、辺りを見回す。



 その異変の原因は1階の広場にいた。




 赤黒い4本足のがそこにいた。

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