want to be children
Loose~ want to be children ~子供になりたい
コンビニで買ったおにぎりを食べたあと、朔良はさっそくアイスを開けた。
「うーん!!火照る体に染み渡る~!!もう一個ぐらい買えばよかった!!」
「お腹壊すよ?」
「ソウは今日大学は?」
「ない。けど明日は早く家を出るからね」
「明日が大学?」
「うん、テスト。それ終わったら僕んとこも夏休み」
「おぉー!!やっとか」
目の前で朔良が食べてるアイスが美味しそうで、創も自分用に買ったアイスを冷蔵庫から出した。
「じゃあ今日は明日のテスト勉強すんの?」
「ん?ノートの持ち込みOKだから、しない。軽くノートチェックするだけかな……」
「……ソウ、何してんの?」
「へ?」
創はバニラにもともと家にあったクッキーを砕いて、入れようとしていた。
「……オリジナルアイスクッキー」
「何!?なんてハイテクな!!わしにもやらせろ!!」
「サクちゃんは充分でしょ!!チョコアイス!!」
「チョコクッキーにする!!」
二人で朝から笑いながら、じゃれていた。
ふと朔良の笑顔が消えた。
「こうして……ずっと子供の時のように、いられたら…」
「……」
アイスを口に運んで、朔良は眉を下げて笑った。
「昨日、ソウは"自分は誰の代役?"って聞いたよね」
「うん」
「本当に全然。ソウを代わりにしようなんて、これっぽっちも考えてなかった。ホント……だよ」
「……」
それは嘘だろうなと思ったが、朔良が「でも……」と続けたから、何も言わなかった。
「でも一瞬…確かに他の男の顔を頭に過らせた…かも」
「……それって彼氏?」
「え!?私、彼氏なんかいないよ?」
「ほら…雨の…車の…」
創は語尾をだんだんと弱らせて俯いた。
アイスの中のクッキーがふやけていく。
朔良は自嘲気味に「…あぁ」と笑った。
「あの人はホントに彼氏じゃないの。向こうは彼女もいるし。ただ……」
「……ただ?」
「ただ私が…向こうに振り回されてるだけ…」
「……」
一番成長と変化が激しい時の8年間を知らないというのは、ほぼその人を知らないと思ってもいいのかもしれない。
ただ無駄に小さな頃を知っているのが厄介だ。
胸が苦しくなる。
朔良はもはや自虐的に笑いながら話していく。
「変に大人じゃなかったらこんなことになんなかっただろうな~。大人だからズルくなったり…」
「疑ったり…」
創も続けた言葉に朔良もクスッと笑った。
「嘘をついたり」
「変に期待したり」
「色々考えたり」
「それでネガティブになって」
「でも泣けなくて」
「人に言えなくて」
「自分に言い聞かせて無理矢理納得して」
「でも結局は自分を傷付ける」
「人も傷付ける」
二人は顔を見合わせて笑った。
「大人って面倒だね」
「だな」
だけどもう子供に戻ることは出来ない。
二人はそれもわかっていた。
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