pretend nothing

Loose~ pretend nothing ~何事もなかったように


近くに住んでる同じ大学の同級生のところに急遽、一晩泊めてもらった。


鍵を大学に忘れたとかなんか言って理由をこじつけて。



創は友達の家のソファーに何度も寝返りを打った。



朔良もどんな想いで夜を過ごしているのだろうか。


創のことか。


それとも彼のことか。



創は朔良との昔や、この手で触った朔良の肌を交互に思い出していた。



朝起きて思ったことは、もしかして自分の家に帰っても、朔良はもう帰ってしまっているんじゃないだろうかということ。



友達にお礼を言って、創は足早に帰った。



自分のアパートのドアの前に立って、創はしばらく止まっていた。


自分は昨日の夜、家を出る時に鍵を閉めただろうかとか、朔良がいなかったら無用心だとか、いても無用心にしてしまったとか、色々な思考が頭の中を巡って、ようやくドアノブに手をかけた。



ドアは…開いていた。


朔良は…



「あ……ソウ、おかえり」



いた。



創はホッとした。


久々の従姉妹との再会が昨日のままじゃ、もう二度と会うことが出来ない気がして、こうして朔良が家にまだいたことを良かったと本気で思った。



「昨夜はなんか一人広々使わせてもらって…悪いねぇ~」


「大丈夫。僕、クーラーがある部屋に泊まってきたから」


「え!?ずるっ!!」



二人でケラケラと笑った。


いつも通りな二人に創は安堵したが、すぐに苦笑した。



こうして昨日のことを何もなかったかのように笑い合えるのも、まただから出来ることである。



「あ"~!!あつ!!朝早いけど、出掛けない?アイスが欲しいです!!」



そう言って笑う朔良に創は頷いた。



「うん。近くのコンビニでアイス買いにいこうか」



お互いに笑い合えば合うほど、昨日のことに触れなければ触れないほど…二人の距離が遠かった。


鍵と財布だけをポケットに入れて玄関に向かうと、創の服を着る朔良も創のサンダルに足を入れる。



部屋を出た時、創は朔良の手を取って、繋いだ。



朔良が驚いた顔で創を見た。



「ついでに朝ご飯も買おうか」



そう言って静かに笑う創に朔良は戸惑いながら頷いた。


大人な距離が寂しかったから、子供の頃にしていた当たり前をしただけだ。


朔良と手を繋いだのに深い意味はない。


創はそう自分に言い聞かせて、二人で歩いた。

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