第26話 夏をつくる②

ある日、俺たちは海へ出た。


我慢に我慢を重ねて貯めた小遣いで買ったロードバイクに乗り、道を滑るように走った。


海の近くまでたどり着けば、心地よい涼しさの潮風を全身で味わった。


道中にある自販機でジュースを買い、その場で一気に飲み干した。冷えた水分が喉を伝い、胃に到達する瞬間までがハッキリと分かった。


友達が買ったジュースを1口貰い、味の変化を存分に楽しむ。


その瞬間だけ、ありとあらゆる悩みを取っ払って、平等な関係値で過ごせた気がしたんだ。


トンネルの中を駆け抜け、全員満面の笑みでペダルを漕いだ。


そして、トンネルの終着点が示す場所に、俺たちは辿り着き────






ある日、1つのビデオテープを再生した。


何となく、引越し準備の合間に暇つぶしに見ようとしたものだった。


ビデオテープを再生した瞬間から、俺は盲目になったかのようにビデオに夢中になった。


レンタルしたチャリで石道を、舗装されていない砂利道を、必死にペダルを漕いで仲間と共に地を駆け抜ける。そんな姿が、俺にはどうしようもなく羨ましかった。


まさしく、あの時の俺たちを表しているようにも、今の落ちこぼれの俺に対する皮肉のようにも見えた。


この少年たちの中に混ざりたい。

そんな思いからか、少年たちの行先を知りたくなった。


【※※※町五番町、笹木公園の楓の木の下】


少年の集団の中の1人が、そう言った。俺は、その場面を何回も、何十回も巻き戻して再生した。


意味が、分からなかった。

だって、この場所は────



俺たちが、地獄へと向かうきっかけとなった場所なのだから。

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