第25話 夢見る少女は地獄でも

 少女は、夢を見た。


豪華な部屋で、豪華な服装で、豪華に彩られた食事をする。そんな夢である。


しかし、そんな豪華な部屋に、少女しかいないのだ。


話すことも無いので、ただ黙って肉感の厚い肉を口に放り込む。

美味しく見えたそれが、口に入れた瞬間に消えてなくなった様に感じた。


話に聞くそれを、少女は知らなかった。


知らないものの味を再現するのは不可能だ。

知らないそれを食すこと自体が、不可能なのだ。


そんな現実に、少女は薄い幸福感と厚い失望を口の中で味わい、夢の味を噛み締めた。




 現実では絶望の日々なのだから、夢ぐらい───

なんて考えること自体、憎い幸せを味わっているのだと、少女は考えていた。


夢の中でなら現実逃避できる。それが出来るのは、現実である程度のものを与えられている者だけだ。


少女は、夢を見ることすら出来ず、許されなかったのだ。


『あぁ───』


喉から押し出した、今にも消えてしまいそうな掠れた声が、吐息と共に吐き出される。


もし、もしも。

今この世界に存在する少女が、この世界自体が、少女の理想であり、まっさらな夢であるとしたら。


それは、酷く悲観的で、残酷な脳を持つ、最低な人間が生み出した代物であろう。


あぁ、それにしても、



(なんで、こんなに晴れてるんだろう)



薄れつつある意識の中、少女は微かな微笑みと共に息を吐いた。


その息は、少女の空間世界を真っ白に彩った。

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