第2話 秘かに進む愛

 ある物好きな男がいた。この者も、怪異好きでこの都市伝説がぶっ刺さったひとりであった。その幽霊に会いたいとの好奇心に負けたのだ。

 登山家のような格好をして、山に入る。ざくざくとしていて登るだけで汗が伝う。慣れない自分には厳しいと後悔しつつ、それでも探すことを止められない、そんな好奇心と都市伝説に心奪われた哀れな自分に同情していた。

 名は北坂薫(きたざかかおる)。26歳。会社に就職して慣れてきた頃だ。深夜にネットに張り付いて、ずっと怪異だとか、異界だとか、幽霊だとかに憧れていた。通常なら、ああすごいな、これは良い...などインドアな怪異、幽霊系オタクとしての日々を過ごしていたのだが、この幽霊だけは目を引いた。

 幽霊らしい姿を見せながら、ふらりと儚く美しい。きっとその時にはもう取り込まれていたのかもしれないと山の中で回想する。それでも良かった。幸せだった。噂を集め、目撃情報の多い山を特定した。幸いにも家の近くだ。早く会いたいとの焦燥感にも似た感情から登山用の物を揃えて三連休の初日からこの幽霊探しを始めた。

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