第21話
こんな風に確認するのって……子供っぽかったかな……?
いくら唐突で不自然で……うちの親が何か隠しているような感じだったからって………会った当日、いきなり、しかもちょっと卑屈な言い方で……。
訊かれたおじさんだって困るよね……。
仮に、うちの親からこの下宿話を持ちかけたとしても、おじさんが私に面と向かって「四条家から頼まれたから仕方なく」とは言わない気がするし。
なんか……私、バカみたい……。
そう自己嫌悪に陥った瞬間、おじさんは、ふ、と小さく息を吐いた。
「深山家は君のご両親に随分とお世話になっている。だから、恩返しのつもりでもあるんだ。こちらから望んで、というのは事実だよ」
優しい声で紡がれた、思いがけない理由。
これは……建て前の言葉……?
それとも、真実?
うちの親と深山家のやり取りについてそう言われても………信じようも、疑いようもない。
結局……ここは、真に受けておくしかないという事……か。
「はぁ」
私が小さく応えると、彼は訝しそうに眉をひそめた。
「……迷惑……だっただろうか?」
「え」
「内心はこの家で暮らしたくないと……思っているのでは……」
彼の苦笑は、寂しげで……不安げで……。
まるで、自分を責めているかのよう……。
「いえっ、いいえっ、そんな事全然っ。私……っ」
咄嗟に首を振った私の、不自然に上擦った声が、静かなダイニングに響く。
「………」
わずかに降りた沈黙が怖くて。
「ここで暮らせて嬉しいですっ、有り難いですっ、はいっ」
頭で考えるよりも先に、口走っていた。
彼は、そんな私の言葉に微かな吐息を漏らし、笑みを湛えると、
「それはなにより」
そう、呟いて視線を伏せた。
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