第20話
「凄い……ホテルに長期滞在するみたいで嬉しいです。ありがとうございます」
私が改まって会釈をすると、彼は、口をつけていたグラスをテーブルに戻し、微かに苦笑した。
「その程度の設備も整っていないようでは、年頃の女の子を預かる事なんてできないよ」
「は……なんか、すみません……」
「こちらが望んで来てもらったのだから、莉奈が気にする事はない」
彼は視線を伏せたまま、私の言葉に応えるかのように軽く首をかしげて見せた。
さりげなく言われた言葉に、鼓動が高鳴る。
「あっ、あの……それなんですけど……」
咄嗟に切り出していた。
この機を逃してしまうと、それについて訊ねることができなくなりそうで。
「うん?」
引き上げられた彼の視線が、私の胸を一層高鳴らせる。
ドクドクと脈打つ身体を硬直させたまま、私は言葉を選びながら唇を開いた
「なんというか、その……同居を申し出ていただいたって事が未だに信じられないというか……うちの親ってば、あまり詳しく説明してくれなくて」
「うん」
「深山のおじい様の生前の希望、とは聞いているんですけど……でも、どう考えても、ご厄介になるのは私なわけですし、うちの両親がお願いして預かってもらったというのが普通かな、と」
絡む視線に負けて、目を閉じてしまう。
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