第19話

「こんな大きなお家なのに……1人で?」





「1人で」





「そ、そですか……凄いですね……」




言いながらパンをちぎり、しつこくバターを塗りつけて、チラリと彼の様子を伺い見る。




そんな私の様子など気にするそぶりもなく、彼は、食事を続けていた。




「家事を、特に苦痛に感じたことはない」




「は……はぁ……。あっ、でも……これからは私もお手伝いしますのでっ。ガンガン言いつけてくださいっ」




手にしていたパンとバターナイフをお皿において、私は身を乗り出さんばかりに宣言した。





ここはやはり、きちんとやる気を見せて、厄介者イメージを少しでも払拭しておかないと!





「莉奈は、自分の部屋の片付けと自分の衣類の洗濯だけで充分。他の事はあまり気を回さなくていい」





瞬きをする私を宥めるような微笑。





「え……でも……」





「莉奈の部屋は元はゲストルームなので、ユニットタイプのバスルームがついている。その部屋の掃除だけでも結構手間がかかるだろうから……。洗濯機は1階の家事室にあるので、食事の後で案内しよう」




彼は、教師のように淡々と、私にとって大変耳寄りな情報を口にした。




凄い。





部屋にバスルームがあるなんて……。




ユニットタイプという事は、きっと、トイレも洗面台も完備って事だよねっ。





さすがに洗濯機は共用しなければならないとしても………いつでも気兼ねなくお風呂にもトイレにも入れるんだ。






同居に関する憂鬱の三分の一ぐらいは、今のおじさんの言葉で一気に吹き飛んだ感じ。

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