第17話
「あっ、あのっ、手伝います」
慌ててキッチンの入り口に駆け寄り、おじさんの後姿に声をかけたけれど、お鍋の中身をお皿に移している作業の最中だからか、彼は振り向こうとはしなかった。
「すぐに終わるから座っていなさい」
「でも……」
彼は、食い下がる私の言葉を受けて、肩越しにこちらを一瞥すると、
「では、それをテーブルに……」
そう言って、ワゴンの上のパンの入った籐の籠を視線で指し示した。
私は、はい、と小さく返事をしてから籐の籠を抱え、いそいそとテーブルに戻りその中央にそれをセットした。
小学生でも出来るようなお手伝いだけれど、おじさんに指示されるのはなんとなく嬉しい。
「そちらへ座って」
突然、声をかけられて、振り仰げばそこには、両手にお料理の盛り付けられたお皿を持って歩いてくるおじさんの姿があった。
テーブルの上に置かれたお皿の中で、トマトソースの煮込みと思われるお肉と野菜が白い湯気をくゆらせている。
そのまま料理本の表紙にしても良さそうな食卓に、私の心はかき曇った。
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