第16話

一瞬、誰かと思った………。





服装がスーツではなくて……グレーのニットシャツに黒いジーンズ姿なんだもの……。





いつの間に……と思って、咄嗟に壁際の時計に視線を移すと、時計の針は8時半を指し示していた。





私はというと、何故かソファに両足を乗せていて、腰から下には白いタオルケットがかけられている。





「え……」





ヤバイ……。





私、寝ちゃってたんだ……。





「やだ、すっ、すみません……私ってば……っ」





「起こしてしまってすまないけれど、食事をしないわけにはいかないから」





「いえいえいえっ、起こしていただいて全然オッケーですっ、っていうか、他人様の家で寝ている私がどうかしてるっていうか、超間抜けで……」





「違う」





「は?」





「今日からここは莉奈の家、だろう?」





「………………あ~……はい……まあ、そうとも言えます……よ……ね」





「さ、食事にしよう」





「はい……ありがとうございます……」






びっくりした……。





いつの間に帰ってきていたんだろう……。






食事の支度を終えてこの時間という事は……戻るのは結構早かったのかもしれない。






4人がけのシンプルなダイニングテーブルの上には、既に彩りの良いサラダと上品な食器と磨かれたグラスとミネラルウォーターのボトルが用意されている。






なんて素敵な食卓………とか、ウットリしている場合じゃない。






手伝わなくちゃだよっ。

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