第15話
いや……いくらなんでも、預かった親戚の子供を放置して、彼女とデートしたりはしないか……。
んじゃ、仕事で……?
そんなに忙しいのなら、預からなきゃいいのに。
私だって、申し訳ない気持ちになるし……居たたまれない。
「ハッ………なんかもう、やってらんないよっ」
小さく毒づき、ソファの背もたれに身体を沈みこませて目を閉じる。
静寂に耳を傾ければ、規則的なリズムを刻む大きな柱時計の振り子の音が、一際大きく感じられた。
柱時計なんて自宅には無いのに……不思議……振り子の音が懐かしい……。
催眠術にかけられていくような不思議な感覚。
例えば、これは悪夢で……。
目が覚めたら、自宅のリビングで。
うたた寝をしていた私を、会社から帰ってきたお父さんが窘めて、お母さんがキッチンカウンターの向こうでお料理をしていて……。
半年ぐらい前の、そんな平穏な日常に戻れたらいいな、と思うけれど……そうなると、進級試験もやり直しか……。
もしも、その時点でこうなる事がわかっていたら……外部受験して自宅近くの大学を受験していたかな……。
それとも………。
おじさんと暮らすことを……受け入れた……?
ああ、そうだ……。
せめて、それぐらい前から何度か会って……。
もう少し仲良くなれていたら……こんなに気を使ったりしなくて済んだかもしれないのに……。
今まで交流がなかったのは、うちの両親の都合なのかな……。
それとも…………。
◇ ◇ ◇ ◇
「──────‥‥な」
「んー?」
「莉奈」
呼びかけられて目を開けると、白い天井に輝くシャンデリアの灯りが差し込み、私の視界を眩惑した。
ギョッとして上下左右の感覚もおぼつかないままに身体を起こすと、すぐ傍で身をかがめているおじさんの姿があった。
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