第8話
二重で切れ長な両目は涼やか。
その目元を、黒く艶やかな長めの前髪が微かに掠めて。
通った鼻筋とメタルフレームの眼鏡が、冴え冴えとした印象を与えている。
その麗容さは、地方の平凡な駅には相応しくないように思えた。
この人が……。
私が小さい頃に遊んで貰った事のある……深山のおじさん……。
なのか?
……そういう前提で見れば、確かに見覚えがあるような。
明るいサンルームにたたずむ長身の男の人の記憶と、なんとなくイメージが重なるし……。
………断定はできないけれど……。
この状況で、名前までフルネームで呼ばれたら………該当する人物はただ1人だ。
「深山のおじさん……ですか?」
私が自信なげにそう問いかけると、彼の表情が柔らかく綻んだ。
まるで、全神経が機能を止めてしまったような錯覚。
魂を抜かれるというのは、こういう感覚を言うのかもしれない……。
私はただ呆けたように、私を見下ろすその人の静かな微笑みを見つめ返していた。
「待たせてしまって悪かったね」
そう、彼の形のいい唇が動く。
それを凝視したまま、私は「いえ」とだけ小さく応えていた。
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