第4話

お母さんの話によると、私と深山のおじさんは、12年前に会った事があるのだそうだ。






12年前……。






なに、ソレ?






そんなの、遠縁の親戚とかいう可愛いモノじゃない。







超絶疎遠……他人の領域だ。







私が中学生になるまで、お父さんの転勤でこの土地を離れていた事と、両親ともに親兄弟がない事で、親戚づきあいなんて皆無だった。






そんな私にとっては、そのファーストコンタクトは、稀少な親戚づきあいの経験ともいえるのだけれど。






12年前って、私、幼稚園の年長組だよ?






そんな昔の事、覚えてるわけないし、【会ったコトがある】うちに入らないんじゃないかと思う。






その不満を口にした私に、お母さんは『深山のおじさんは、実の弟のように信頼している従弟だから大丈夫』的な言い分で返してきた。





でもそれは、お父さんとお母さん的に安心だ、と言う意味で、私的には全然大丈夫じゃない。






おじさんの写真は子供の頃のものしかなく、それすらも仕舞いこんでしまって在り処が分からない……とか。






その程度の関係のクセに、よくもまあ『弟のように信頼している』なんて言えるものだと思う。







おまけに『あの時、沢山遊んでもらって凄く懐いてたのに、忘れてるなんて薄情な子』とか言い出す始末。






そりゃあ、遊んで貰えば、他人にだって懐くもんでしょ?幼児なんてものは。






写真を見せてくれた事も、深山家の話をしてくれた事もないのに、娘を薄情者扱いするなんて酷すぎる。






ていうか、そうまで言って私を納得させようとするのが、メチャクチャ胡散臭くて。






なんかもう、有無を言わせない勢いのようなモノを、その時の両親の説得に感じていた。






だから、結局はそれに異を唱えることは出来なくて。






私は、釈然としない気持ちを抱えながらも、新生活を迎える準備を始めたのだった。

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