第3話
深山のおじさんという人はお母さんの父方の従弟にあたる人で、その人の家が折しも大学部の近くで。
自転車で通えた中等部や高等部とは違い、自宅から電車とバスを利用して片道1時間強かかる大学部に通うなら、深山家にお世話になったほうが安全だという事になったのだそうだ。
お母さんがうちの大学部に通っていた当時も深山家に居候させてもらっていて、深山家はお母さんの第二の実家といっても過言ではないらしく……。
今は亡き深山のおじさんのお父さん……つまり、お母さんの叔父さんという人が、生前、私を預かる事を強く望んでいたこともあり、この度の話が出たのだという。
そりゃあ確かに、定期代だってバカにはならないし、電車&バス通学は毎日の事となると結構大変だろう。
大学部の近くにたまたま親戚の家があり、その親戚宅が預かると申し出て来たならば……それは、うちの両親にとっては願っても無い話……。
そんな諸々の理由を総合的に判断しても、合理的で経済的で納得せざるを得ないものだというのは、呆然としていた私の頭でも理解できた。
でも、私の心情的には、到底納得できるような話じゃなかった。
だって………。
深山家なんて親戚がいる事自体、初耳だったんだもの。
「なにそれ、あり得ない、マジで無理っ!深山のおじさんなんて知らないし!」
そう、拒絶を顕にした私に、隣で黙々と食事をしていたお母さんは手にしていたお箸をテーブルに置いて、口の中で咀嚼していたモノを飲み下した。
そして、
「会わせた事、あるでしょ?」
と、思いがけない言葉で私を絶句させ、深山のおじさんと私の初対面について淡々と語りだした。
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