第11話

そんな中、麻衣ちゃんから、西乃杜大の学園祭に行こうと誘われた。






十和田さんと遭遇してしまう可能性が高いので、おじさん達が許可してくれるとも思えないし。





かといって、明穂や陽菜がわざわざバイトのシフトを調整してまで行くと言っているものを、ヒマを持て余している私が行かないというのも如何なものかと思って……。





どうしたものかと迷っているうちに、西乃杜大の学園祭初日は明後日に迫っていた。







皆の都合は土曜日の方がいいらしいので、おじさん達に相談するなら今日か明日……。





前日になって麻衣ちゃん達にメールで謝るのも申し訳ないし……ダメモトで相談するなら今日の方がいい。






そう意を決して、1人で遅めの夕食を取った後、私はリビングでテレビを観ながらおじさん達の帰宅を待った。












◇  ◇  ◇  ◇








俊彦おじさんが帰ってきたのは、午後の9時半を少し過ぎた頃だった。





訊ねれば、夕食はまだ済んでいないとの事。





私が食べた物と同じでいいと言われたので、食材宅配業者のレシピ通りに白身魚の香草焼きとサラダを作り、多めに作ってあった野菜スープを温め直して、ライ麦パンを温めて。





俊彦おじさんがシャワーを終えるまでの間に、なんとか夕食の準備を整える事ができた。





生成りのシャツにコットン素材のブラウンのパンツと、ラフな服装で現れた俊彦おじさんは、妖艶ホストモードの彼や紳士モードの彼とはまた違って、爽やかで純粋な印象。





この前自宅に帰った時に、お母さんが『子供の頃の俊彦くんは眉目秀麗で品行方正な優等生で、それはもう天使のようだったわ~』とか、ウットリしながら言っていたけれど……。





その天使の部分の名残りがコレなのかもしれない。





そんな事を考えつつ、妙に納得しながら彼を眺める私をよそに、俊彦おじさんは、テーブルの前で両目を輝かせ、それまでの爽やかさを蹴散らす勢いで感激に悶えた。





私が『添付されていた香草ソースを使って焼いただけ』といっても、彼のテンションは全く落ちず。





彼は、上機嫌でワインのボトルを開けて、お気に入りの交響曲を流しながら喜々として食事を始めた。

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