第9話
「俊彦の真意は分からない。いずれにしても、莉奈の選ぶ相手が俊彦なら、深山家にとって幸いだ」
幸い……?
修哉おじさん的には、私が俊彦おじさんと結婚すればいいと思っているの……?
それが……修哉おじさんの幸せ?
「あー、あのっ、そう言えばっ、俊彦おじさんもっ……修哉おじさんなら、私に触れるのも許せるし、譲れる、みたいな事を言ってました。……って事は、つまり、私への愛がどうのとかじゃなくて、それだけおじさん達がお互いを信頼しあっているって話で……だから、全然、俊彦おじさんにはその気なんかないと思いますっ」
泣きたい気持ちと、わけの分からない苛立ちが同時にこみ上げて、私は、投げやりに言葉を紡いでいた。
「それは……他所の男に奪われるぐらいならその方がマシ、という例え話だろう。俊彦は、それほどまでに莉奈を大切に想っている」
涼しい顔で……。
それが真実とばかりに、サラリと言われてしまった。
じゃあ、修哉おじさんは?
こんなに甘やかして。
こんなに優しく微笑んで。
俊彦おじさんが僻むぐらい、私を独占して見せる事もあるのに……。
修哉おじさんは……違うの?
私が……修哉おじさんを好きになるのは……いけないの?
ああ、もう、やだ……。
さっきまでふわふわと浮き上がっていた心が……冷えて……しぼんで……落ちていく感じ……。
身体は傍に寄り添ってるのに……。
心だけ、どこか遠くへと突き放された気分。
でも、そんな事で、黙り込んじゃいけない。
話を……続けなくちゃ。
「で、でも、なんか……それって、アレですよね~、妹大好きのお兄さ~ん、みたいな感じですよね~っ」
場の空気を茶化してしまおうと、なるべく明るい声で言ってみたけれど。
修哉おじさんは、その言葉を否定するかのように、微かに首をかしげて苦笑した。
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