第4話

「いえ、あの、このまま……こうしているのが、ゆっくりできていいな~と……」




なんか、とってつけたような理由になってしまったけれど、これが私の本音だし……。





2人きりで密着して過ごせるチャンスだもの、今までセーブしていた分、甘えたいし幸福感に浸りたい。





にやける口元を手の甲で抑える私の隣で、修哉おじさんが、ふ、と微かに息をついた。




「分かった」




彼の納得の言葉にホッと胸を撫で下ろしつつ、ほんの少しだけ修哉おじさんの傍ににじり寄る。





肩が触れそうな距離。






修哉おじさんがコーヒーを飲む、その息遣いや喉の音まで聞こえそう。








ふふ………嬉しい。







……幸せ……っ。








……もうっ……魂抜けそう……っ。







「……莉奈?」





呼びかけられて、ハッ、と視線を上げれば、修哉おじさんが訝しそうに私の顔を覗き込んでいた。





多分、いきなりにじり寄り、黙ってニヤニヤしている私の様子が、気になったのだろう。





自分でも、そんな自分が気持ち悪いと思うけど。





せっかく【練習】という免罪符があるんだもの、使わなくちゃ勿体無い。






「えと……練習、です」






私がニンマリ笑って答えると、修哉おじさんは、形のいい眉を微かにひそめた。





「………」





「………」





しばしの沈黙。





【練習】と言えば許されると思っていただけに、この思いがけない沈黙はかなり気まずい……。





いつものように隣に座って、前向きに【練習】に取り組んでいるそぶりをしただけなのに……この間は何?





「……何があった?」





「え……」





「いつになく懐いてくるから……」




ギク。




そ、そっか……。




確かに、私から積極的ににじり寄っていく事なんて今までなかったし……。





何かしらの変化があったと思われても不思議じゃない、か……。

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