第2話

弄ばれて、試されて、揺るがされて……。






抱きつきたいという衝動を煽られる。






触れ合う熱に浮かされて。





甘い言葉に気が遠のいて。





その度に戒めても、ねじ伏せても、想いは身体の核から溢れてきて。





一瞬でも気を抜けば、零れ出てしまいそう。





これ以上、修哉おじさんに婚約者扱いされたら、私はもう……自分を戒める事ができなくなる。








私は意志が弱いのかも知れない。





でも、修哉おじさんだって悪い。





まるで、本当に女性を口説くかのようなそぶりで、私を見つめて、私に触れて。





私を魅了しようとしているとしか、思えないもの。








彼の言う【婚約者のふり】が、どこまでのクォリティを目指しているのか知らないけれど。






完璧主義の彼の事、親戚の子供がうっかりその気になってしまってもやむを得ない、ぐらいの考えでいるのかも知れない。






私が修哉おじさんの事を好きになってしまっても……構わないって事なのかな……。






でも、仮にそうだとしても。






それは、受け入れる覚悟があるという意味ではなくて。





4年後にはこの家を出て行く親戚の子供の、一時の気の迷いとして。






大人な彼には、その程度の事は難なくあしらえてしまうと……。






ただ、それだけの事なのだろう。












はっきりとしているのは。






偽装婚約という契約が解消したその時の、寂しさや虚しさや喪失感を少しでも軽くしたければ、自分の気持ちを常に戒め続けるしかなく。






逆に、修哉おじさんの所為にして、今の甘い日々に身も心も委ねてしまえば……いつか、寂しさと喪失感に襲われるだけ。






つまり、先延ばしにしても、しなくても……この恋心を抱き続ける以上、痛みは避けられないという事。









だったら私は……もう……。






この立場に乗じて……悦楽に浸ってしまいたい。






修哉おじさんの望みのままに、流されてしまいたい。







そうする事で、契約が解消した後に訪れるであろう寂しさや痛みが、強く大きくなるのだとしても。






私はそれを、甘んじて受けるから。

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