第52話

「………っ」








酷い後悔と自己嫌悪に、背筋が慄いて。







「莉奈……ごめん……」






平静を装って切り出しても、俺は、後ろめたさのあまり伏せた視線を上げられないでいる。






「やっぱり……やめておこう」






なんとか口元に笑みを作り、俺は、手にしたばかりのグローブをワゴンの上に置いて、胸ポケットの中から白いリボンを引っ張り出した。







弱音のように吐き出した脈絡の見えない言葉は、莉奈に戸惑いと不安を与えてしまったかもしれない。







「俊彦おじさん?」






莉奈はわずかに眉をひそめ、怯んだように半歩退いた。






その莉奈の仕草に、進めていた歩みが止まる。








ああ、そうだよね。







唐突すぎた。







触れる前に、説明をしなければ……。







「いや、その……いくらマリエのプロデュースを莉奈本人から任されたとはいえ、花嫁の下着の飾りにまで口出ししたら、ヒサキあたりが非常識だって非難してくるかも知れないな~って……」






莉奈を納得させる理由を言わなければ、と思考を巡らし、






「だから、やっぱり背中の編み上げリボンは白にしよう。……青いものなら、由佳里ちゃんに頼んで、ブーケの中央の見えないところにデルフィニウムでも忍ばせてもらって……」






ひたすら姑息な言葉を並べ立てていく。





けれど、それも明らかに異様と映るのか。






衣擦れの音を立てて更に退き、莉奈は、俺の言葉を受け入れるそぶりを見せず、ヴェールを乱して首を横に振った。

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