第49話

「わ、綺麗……秋晴れの空みたいな深い水色ですね。……あの、でも…これを……何に?」






「ええと……例えば、ほら、ビスチェの背中部分の…編み上げリボンの代わりに、これを使うのはどう?」






背中部分の白いリボンの装飾を、これに変えるだけ。






咄嗟に思いついた割りに、良い提案だったかもしれない。






目の前に立つ莉奈も、なんだか嬉しそうだ。







「なるほど~。見えない場所だし、いいかも。ブルーの編み上げなら、シンプルで大人っぽいデザインのインナーが可愛い感じになりそうですね」







輪からリボンを伸ばし、微笑む莉奈は、少女のように可愛らしくて……。






愛おしくて。






思わず、抱きしめてしまいたくなる。






ああ。






遠い昔に放して。






秘めて。







耐えて。






諦めて。







とうに、昇華させる事が出来たと、思っていたのに。








まだ、俺は、この子をこんなにも、愛していて。







こんなにも失えないと感じている。










「今、通してみようか?さっきみたいに背中を少し出すだけ。襟のホックと上から2つ目くらいまでのボタンも、止めたままで出来るよ」







みるみる間に胸を染めていく憂い色の【何か】を、なんでもないそぶりで隠し、訊ねれば。







「……じゃあ、お言葉に甘えて、お願いします」







莉奈は、嬉しそうに頷き、手にしていたリボンを差し出して。






淑やかにドレスの裾をたくし上げ、再び俺に後ろを委ねた。

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