第46話
「髪も、きちんと上げてあげるね。……折角だから、靴も履いて、ヴェールとティアラとグローブも着けてみよう」
「靴も、ですか?」
後ろを向いたままの莉奈が、どんな顔をしているか判らない。
多分、室内で靴を履くのが申し訳ない、と言いたいのだろう。
そんな気遣いは無用なのに。
「ヒールの高さを考慮した裾丈だし……履いてみなければ、全体のバランスも確認できないよ?」
「でも、俊彦おじさんの大切なアトリエですし、靴はさすがに……」
莉奈は躊躇をあらわにして、肩越しに俺を見上げた。
「このマットの上なら傷もつかないし、大丈夫。サムシング・ニューとして用意した新品の靴なんだから、気にしないで」
俺が床に敷いてある2畳分程のマットを示すと、
「……ありがとうございます」
莉奈はその表情をようやく綻ばせた。
◇ ◇ ◇ ◇
莉奈の背後に立ったまま、彼女の髪に手を伸ばし。
黒いゴムと数本のピンを使って彼女の髪をまとめていく。
緩くウェーブがかかっている髪は扱いやすく、簡単にアップスタイルにできる。
それでも、なるべく本番の髪型に近づくよう、ピンで補正をしていると、突然、莉奈が微かなため息をついた。
「どうした?」
整った髪から手を放し、何気なく訊ねる。
すると莉奈は俺を顧みて、少し困ったように苦笑した。
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