第36話

「ん……」








微かに呻き、顔を傾け、白いブラウスの襟から細い首が覗く。







枕元に投げ出された左手。






その下を奔放に流れる、柔らかな髪。






その寝顔は、愛らしく、清らか。








まるで、咲く時を静かに待つ、白薔薇の蕾。










いや。








違う……。










蕾はとうに綻んで。








今はもう、咲き初めの白薔薇。













触れていたはずのぬくもりを失い、うっすらと瞼をあげる。









その瞬間、









俺のすぐ傍で何かが跳ねて、ベッドがフワンと上下した。










「ん………莉奈……?」








微睡みに意識を浮かべたまま、名を呼べば。








「ひ……えっ、うあっ!?あぁっ!?」







愛しい白薔薇は、その麗しい顔を恐怖にゆがめ、その清らな姿にはおよそ似つかわしくない濁った悲鳴をあげた。

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