Chapter2

第34話

ああ、意識が眩む。







悪い夢を見ているようだ。







いや、いっそ、夢であってくれ……。









脳内でわめきながら、長い廊下の西の突き当たりを、足早に目指す。







四条家の申し出は、全て、今の俺達にとって最良のものだと分かっている。







でも、動揺が隠せない。







これ以上、冷静なフリをして、話し合いの場にいられない。











冗談じゃない。






ふざけるな。







なんて勝手な……っ。











確かに、この世界であの子を愛するに相応しい男は、俺をおいては修哉しかいないだろう。







修哉ならば、いい、とも思うし。







必ず修哉の救いになる、とも思う。







だけど。







榊家と桐堂家から、修哉を守り、修哉を真っ当に生かす為とはいえ。







莉奈は、まだ六つだぞ?







なのに、婚約なんて……っ。





「あり得ない……っ」







ひそめた怒りを吐き出し、ゲストルームのドアの前で息を整える。








泣きたくなる程の怒りを、硬い塊にして飲み込んで。









俺は、ドアをそっと開けた。

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