第30話

それを恐れるならば、一生……莉奈と関わらなければいい……。






そりゃあそうだ。







そんなの、分かりきっている。







でも……。







それは無理。






そんな生き地獄、俺は耐えられない。






愛したい欲望を、12年もの間秘めていただけでも、気がおかしくなりそうだってのに。












やっとこの家に預かりうける事ができて。







この手で触れられる距離にいて……。






それなのに、能動的に莉奈から遠ざかるなんて………っ、








「それ、俺史上最凶の縛りプレイだからっ!そんなの絶対無理っ、耐えられない……って……あれっ?」







ひそめた声で嘆きながら、ドアのノブに体重をかけると、思いがけずそれは簡単に動いた。







うっそ……まさか開いてんの?







どうして、鍵、かけてないんだ?







いくら修哉が良識的な保護者代理に徹しているからといって、18歳の女子として警戒心が乏しすぎる。







それとも、修哉が莉奈に施錠しろと指導していないのか……?







いや……あの修哉に限って、そういう面での抜かりはあり得ない。







……そんな事より……





「も……凄い、誘惑なんですけど……っ」







だって……これって……。






莉奈の視界に俺の姿を入れる事なく、俺が莉奈の姿を心ゆくまで愛でる事ができるって事だろ?







莉奈が熟睡していれば、この指で髪を撫でてもバレないって事だろ?







熟睡していれば……。






絶対に、起きなければ……。







「~~~~~~っ」






ああ、この12年、ずっと我慢してきた事が次から次へと浮かんで、せめぎあって……。







どうにかなりそう……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る