第29話
本心では、狂おしいほど会いたいのに。
いざ、会えるとなると怖くて……怖くて…。
その不安を誤魔化すために、必要以上に酒をあおり続けた。
再会する為に酒の力を借りて……と、考えながら。
泥酔してしまえば、莉奈に会えない理由になる、とも、考えて。
結局、臆病な俺は、幾度と無く訪れた選択の都度、無意識に後者を選んでいたんだ。
修哉からの報告では、莉奈は、修哉に再会しても12年前の記憶を取り戻した様子は無い。
そして俺の存在そのものも、まるで忘れているという事だった。
それはとても……とても寂しい事だけれど。
ある程度、想定済みの結果だったし……。
むしろ、そうでなければならないとも思う。
俺達が恐れているのは、莉奈の意識の混乱。
彼女が心に封じ込んだであろう、得体の知れない【何か】の……その蘇生なのだから。
幸いな事に。
修哉の時は、それを免れた。
けれど……。
四条家と疎遠にしていた修哉に比べれば、いくらかは俺の方が幼い頃の莉奈との関わりが深い。
俺が莉奈と再会してしまう事で……。
彼女の目にこの姿を映す事で、莉奈が【何か】を思い出してしまう可能性は否めないんだ。
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