第23話
そうは思っても、鍵の秘密が気になってしまって、未練たらしく修哉の部屋の棚に視線をめぐらせてしまう。
そんな俺を制する事無く、使用人の女性は修哉の前に進み出た。
「あの……修哉様。少々、お訊ねしたいことがございます」
「何?」
「律子様が入院された頃から、とある品が見当たらなくなっておりまして……」
「とある品って?」
妙に朗らかな声で訊ねながらベッドから立ち上がると、修哉は、何故か俺の隣に寄り添い、いきなり俺の肩に片腕を預けた。
一見、親しい友人同士が、馴れ合って肩を組んでいるような図だ。
「……?」
修哉から仕掛けられた【仲良しごっこ】に、俺は内心、激しく動揺した。
けれど、すぐに、修哉が意味も無くこんな事をするはずがないと思い直して、平常心を装い、しなだれかかる修哉の体重をささえてやる。
すると、修哉の右手が、俺のスラックスのポケットにそっと滑り込んだ。
確かな重みをそこに感じて、ふと、修哉の顔を覗き込めば、修哉は俺の肩に頬を寄せたまま微かに笑った。
従兄弟同士だし、こんな風に密着する程仲が良いのかもしれない、と……俺達の事情を深く知らない使用人なら、安易に思い込めるのだろう。
目の前でじゃれあう中1男子のガキっぽさに呆れたような顔は見せても、彼女は、陰で俺達がしていた事には気付かなかった様だ。
「あの、わたくし共が執務長から探すように申し付かりましたのは、銀のロザリオのような首飾りでございます。修哉様は、そのような物にお心当たりはございませんか?」
「知らない」
ふん。
よく言うよ。
たった今、俺のポケットに押し込んだくせに。
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