第22話
「……遺品として渡されたのは、その箱だけだ」
俺の焦りに釣られるそぶりを見せず、修哉は机の上に乗っているダンボール箱を顎で指し示した。
「これだけ?……まあ、いいや、ちょっと見せて……」
色あせた年賀ハガキの束と、カバーがかかった状態の文庫本数冊、風呂敷に包まれた衣類のようなモノの下に、数冊の古い日記帳のようなものがあった。
それらをざっと探ってみたけれど……。
「……鍵つきのものは……ないな。……これは、日記帳の鍵じゃないのか?……もしかしたら、まだ、叔母様の部屋に……」
「それはあり得ない。既にもぬけの殻だ」
即、否定してくるあたり……修哉自身も、それなりにこの鍵に関心を示して、探しに行ってみたのだろう。
その修哉が『もぬけの殻』と言うなら、今更探しに行っても無駄か……。
「じゃあ、誰かが鍵のかかった何かを持っていて……この鍵を探し……」
探しているんじゃないのか?
そう、言いかけた俺の声を、突然のノックの音が遮った。
「はい」
修哉の応答を待って、遠慮がちにドアが開く。
姿を現したのは、応接室で俺に紅茶を出してくれた使用人の女性だった。
「失礼いたします。深山家御当主様が、俊彦様をお迎えにいらっしゃいました。応接室でお待ちですが……」
「あ……ああ、はい、すぐに行きます」
なんだ、もう来たのか。
父さんが来てしまっては、捜索は続行不可能だな。
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