第20話

「むっ。……か、仮に、周囲がそうでもっ……本人としては、生前信じた神の前で天国へと送られたわけだし……きっと喜んで……」






「聖書も持ってなかったのに……生前信じた、なんて決め付け……無理がある」






「でもさ、クロスペンダントを息子への形見の品にしたってことは、やっぱり、信仰心の表れ……じゃないか?」






「どうだか?……形見の品のつもりだったのかどうかも……あやしいもんだ」






ああいえば、こういう……。






しかも、俺の言い分は希望的憶測で、修哉の言い分は、事実に基づいた見解。






この言い合いは、明らかに、修哉に分がある。






そんなの、わかってるけど……っ。






「なんで、そんな言い方すんだよ?……叔母様はきっと、1人息子のお前を残して逝く事がしのびなくて、そうやって大切にしていた十字架を、お前に……」






つい、ムキになって声を張ってしまう。






そんなガキっぽい態度をとった俺に対して、修哉は、腹を立てる事はせず、ただ、呆れたように息を吐いた。






「さすが王子様、おめでたいな。お前の母親は、そうやってお前に愛情を示して、形見の品を残したりもしたんだろうが……」






「な……っ」






「俺の母とお前の母親は、境遇が違う」






ピシャリ、と言い切られ。






俺は、それまでの言い分についての拘りを棄て、修哉の重い言葉を受け入れた。

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