第19話
てっきり、叔母様を榊家の墓に入れない為に、榊家の連中がそう仕立て上げたと思っていたのに……。
それは、俺の、拙く歪んだ妄想だった……のか?
だとしたら。
亡き叔母様の信仰心を、端から疑ってかかっていた俺は、なんて愚かな……。
「母がこれを持ってた、ってだけの事だ。洗礼を受けたなんて話も聞いてないし、遺品の中に聖書もない」
動揺を隠せないでいる俺とは対照的に、修哉は冷めた表情のままそう言った。
「いや、でも……俺……てっきり、改宗した事に仕立てられたって思ってて……」
そう。
仕立てられて。
正妻としてあるべき扱いを許されず、菩提寺の墓に入る事を許されなかった。
そう感じて、俺は、憤っていたけれど。
叔母様が自ら改宗をしていて、その十字架を大切にしていたと分かれば……許せる気がする。
教会での葬送の儀を。
隣県の霊園に作られた墓の下で、独り、眠る事を。
全て、良かったと思える。
だって、それはきっと、叔母様の望みに適っていて。
其処は、榊家当主と親族達に疎まれてきた叔母様が、心安らかに眠れる唯一の場所なのだろうから。
「結果的に、叔母様の信仰が尊重された事になるなら、なんか、良かったかな、って……」
「清清しい気分に浸ってるところに水をさすようで悪いけど……さっきのお前の推測が、親族間での共通認識だ。この家の連中が、母の信仰を尊重するもんか」
修哉の冷めた訂正に、空きかけた俺の胸が再び雲ってゆく。
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