第17話
「シガラミ……ねぇ。確かに、いけ好かない女だもんな、桐堂沙耶花は」
ふふん、と、鼻でせせら笑い、返してやる。
すると、修哉は、その冷めた目をようやく俺の目に合わせた。
「……まるで会った様な口ぶりだな」
そう言って訝しげに眉をひそめる修哉は、一見、冷静に見えるけれど。
内心、穏やかでは無いのだろう。
まあ、解らないでもない。
単に高慢で不遜なだけでなく、常軌を逸脱していて……危険な匂いがした。
あの女は、多分、深く関わった者に災禍をもたらす。
「会っちゃったんだよ。俺がここに来た時、桐堂沙耶花が居て、スゲー焦った。……この家って、主不在の私室にアカの他人を通しちゃうの?」
呆れて見せた俺に、共感できる部分があったのか……。
修哉は、俺のイヤミにつっかかる事はせず、忌々しそうに舌打ちをした。
「女中頭が計らったんだろう。……あのババア、あんな成金の娘にまで媚びやがって」
ババア……って。
その綺麗な顔で、なんつー暴言を吐いてくれるんだ……。
うちの父さんの前でそんな事してみろ。
大目玉くらって、家の隣の雑木林に放り出されるぞ。
「言いたい事はわかるけど……一応、イイトコのお坊ちゃんなんだから、もう少し品格のある言葉を……」
「桐堂の娘と……話したのか?」
ゲンナリとしつつ苦言を呈した俺の言葉はスルーして、修哉は、真剣な顔でそう問いかけてきた。
「……少しね。婚約者としてお慰めに参りました~、みたいな事、言ってたぜ?」
「ムナクソ悪い」
ああ、ホント。
同感だ。
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