第15話
「何処にいるかは知りませんけど……慰めは間に合ってるっぽいです。ここにいても時間の無駄ですから、帰った方がいいと思いますよ?」
「……あなた、何をいっているの?」
あからさまに不快の色を声に乗せ、桐堂沙耶花は片眉をひそめた。
よし、もう一押し。
「あれ?意味、解りませんでした?……つまりですね、修哉はケバ~いオネーサンとヨロシクやってますから、当分戻らないんじゃないかな~、ってコトです」
「………っ」
俺の狙い通り。
侮辱されたような気になったのだろう。
桐堂沙耶花は、俺をきつく睨んで立ち上がり、無言でドアを開けて出て行ってしまった。
周囲は彼女に気を遣って、本当の事は言わないだろうから……果たして、俺が今言った事を信じて、修哉との縁談を諦めてくれるかどうかは不明だけど。
修哉が榊家の後継者でなくなれば、両家の縁談は成立しないし。
桐堂沙耶花自身、社長令嬢としての立場にある以上、榊を名乗らなくなった修哉との未来を望む事は許されないはずだ。
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