第13話

「あの調子じゃ、共通の話題とかも簡単に見つかりそうにないし………アイツの趣味とか好きなモノぐらいは……探っとくか?」







何気なくドアノブに手をかけて引いてみると、ドアは何の抵抗もなく開いてしまった。






誰もいないと思って躊躇わず開いたそのドアの向こう側では……。






黒いワンピースドレスを着た黒髪の女が、1人、部屋の中央に敷かれたラグマットの上に座っていた。







「わっ?」






思わず焦って声を上げた俺を見上げ、その女は






「……どちら様?」





そう、冷静に、そして白けたような表情で問いかけてきた。






ハンガーにかかった修哉の中学の制服が眼に留まり、ここが間違いなく修哉の部屋だと俺に教えてくれているのに……。






なんでここに居て当たり前といわんばかりの堂々たる態度で、この見知らぬ女は座っているんだ?






というか……マジで……誰?






「すみません、ノックもせずに失礼しました。俺は、深山俊彦といいまして、榊修哉の外戚にあたる者です。……貴女は……榊家のご親族の方ですか?」






「……わたくしは桐堂沙耶花と申します」






トウドウ…サヤカ……。






トウドウ……?






桐堂?







もしかして……桐堂商事の……。







「あ……」







修哉の、縁談相手か?








夕べ、父さんから聞いたばかりで。






まだ中学生なのに縁談なんて、気持ち悪い、バカじゃねーの?……って、呆れながら聞き流してしまって、詳しくは知らないけど。






確か、桐堂商事の社長令嬢が修哉に酷くご執心だとか……そんなような話だった。

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