Chapter2

第11話

しかし。







ホント、異様な家だ。





当主の正妻の葬儀が行われたばかりなのに、そういう余韻みたいなものが一切ない。







広い屋敷の中はがらんとしていて……。






たまに廊下ですれ違うのは使用人のような人ばかり。






普通、本家の人間の葬儀があったその当日なら、喪服を着た親戚縁者が本家の屋敷に集って、故人を偲ぶもんなんじゃないかと思うけれど






全然、そんな空気じゃなくて。






まるで何事も無かったかのように、見知らぬ人間達の日常の時間が流れている。






喪服をキッチリと着ている俺こそが、場違いなヤツみたいだ。








案内された応接室に居るより、修哉の私室で待ち構えていた方が、修哉に会える確率が上がると思って来てみたけれど。






修哉の部屋の周辺の廊下なんて、さっきから使用人すら通らない。






ここは離れとはいえ、母屋に劣らない立派な建物みたいだし、内装はモダンで清潔に掃除もされているけれど……。






不気味なぐらい静かで、まるで廃屋に踏み入ったような気分になる。






こんな隔離された空間に、叔母様と修哉は一体、いつから……。







「………」







知らない事だらけだな。






従兄弟っていったって、過去に1度しか会った事が無くて。






それだって小学校低学年の頃で、マトモに口を利いた記憶もない。






ただ、同い年の従兄弟同士なのに、何故、思うようには会えなくて、仲良くも出来ないんだろう、って、漠然と不満に思っていただけ。






お互いに何も知らない。






お互いに何も理解できてない。








数少ない共通点といえば。





同じ、沢村家の血を引いているという事と。






2人とも母親を亡くしてしまったという事ぐらいだ……。










こんなんで……本当に義理の兄弟になって、一緒に暮らしていけるんだろうか……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る