第10話
行こう、って。
何処に行くつもりだ?
喪に服すべき日に。
実の母親の葬儀を抜け出しただけでは飽き足らず、この上、どんな非常識な振る舞いをするつもりでいる?
「ダメだ、修哉。……あのさ、オネーサン、俺らが今着てるの、なんだか分からない?」
「はぁ?黒いスーツ?…何?それがどうかした?」
どうでもいいような質問をするな、と言わんばかりの、つまらなそうな声。
しらばっくれているのか、それとも、本当に関心がないのか……。
「これ、喪服。俺達は、身内の……葬儀の途中なんだよ」
「へぇ。こんないい天気の休日に、葬式なんてかったるいね~」
「……かったるい……って……」
「行くぞ」
俺とケバい女の会話などまるで聞いていないそぶりで、修哉は黒いネクタイをスルリと解き、鬱陶しそうに襟元を開いて言い放つ。
そして、解いたばかりのネクタイを床に捨て、修哉は出入り口へと歩き出した。
「あ、もう、待ってよ~。……じゃね、イトコくん」
俺に手を振り、コツコツとブーツのヒールを鳴らしながら、青い服の女は修哉についていく。
その2人の後ろ姿を、俺は、ただ茫然と見送る事しかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます