第7話
彼女は榊家に嫁いでからずっと、榊家先代の夫人から疎まれていたという。
そして、夫である榊征一氏とも不仲で、幸せとは程遠い結婚生活を強いられていた。
だから、叔母様が生きる事に執着していなかったのは、事実なんだとは思う。
けれど、精神疾患に因る慢性的な拒食の症状が続いて、脳機能に障害が生じて錯視、健忘、妄想の症状があっても。
もっと早い段階で周囲がそれに気付き、入院させるなり治療を受けさせていれば、おそらく死に至るような事は無いはずだった。
疎外、放置、そして……取り返しが付かない事態になってようやく果たされた最低限の責任。
叔母様を生きさせる事に、周囲の人間が執着していなかった。
それが、叔母様の死因の元凶。
それなのに。
贖罪の気持ちを現すどころか、体裁を取り繕いながら淡々と事務的に……。
この世から追放して、尚、疎み続ける。
榊征一という当主が統べるこの榊家は、そういう事を是として平然としていられる一族なんだ。
だからこそ。
こんな家に修哉を置いておくことなんかできない。
修哉の事は、好き、でも、嫌い、でも無いけれど。
俺にとっては、数少ない大切な血縁者なんだ。
榊家から救い出さなければ。
そう強く誓って、今日、俺は、ここにきたのに……。
どうして、修哉は、俺から逃れようとするんだよっ!
「くそっ……わざと入り組んだ道……選んでやがる……っ」
榊家本邸に戻る気かと思いきや、路線バスの停留所を通り過ぎて、住宅街に入り……やたら曲がり角の多い迷路みたいな住宅街をやっと抜けたと思ったら……。
大型車の行き交う音がやかましい、騒然とした幹線道路沿いに出てしまった。
一体何処へ向かっているんだ?
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