第6話

訃報の知らせに書かれていた表向きの死因は『心不全』。






でも、その大もとの死因は『重度の栄養失調による衰弱』。






その事実を父さんから知らされた時、俺は、一体何の間違いかと思った。








敗戦直後の貧しい時代ならまだしも。






この現代の日本において、まして財力のある榊家の正妻という立場にあって……死因が栄養失調の衰弱死って、なんなんだよ。






酷く精神を病み、最近では健忘性の脳機能障害を発症していたのは事実らしいけれど。






俺の母さんとは違って、叔母様は元々虚弱体質でも無かったし、持病があったわけでも無かった。






年齢だって40代前半とまだまだ若くて。







それなのに……この裕福な家の正妻の座にあって、衰弱死だなんて。






そんなの、自ら死を望んだと……言っているようなもんじゃないか。








叔母様は、自ら、生きる事を放棄した。






そうじゃなければ、逆に納得できない。






中学生の俺に配慮して、父さんがあえて隠しているのか。






榊家が、父さんに事実を伝えていないか。






きっと、そのどちらかだ。









そう思い至った時。






俺は、叔母様の心の弱さに対して腹を立てた。






俺の母さんは、生き長らえたくても出来なかったのに。






その母さんの実の妹である叔母様が、どうして自ら生きる事を放棄してしまったんだ、と。






キリスト教では、それは重罪ではなかったのか?…と。






しばらくの間は、ガキっぽく憤って。






でも、冷静になって考えて……色々思い返して。








決して、それも憶測の域を出なかったけれど。






俺は、叔母様の死の真相について、自分なりの見解を導き出した。

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