第5話
……っていうのは、あくまでも俺の憶測で。
本当のところは分からない。
俺は、殆どといっていいほど、叔母様と面識が無いし。
叔母様にとっては実の姉の夫……つまり、義理の兄にあたるうちの父さんですら、榊家に取り込まれていた叔母様と直接会って言葉を交わした事なんか、過去に数回程度しかないのだから。
疎んでいたくせに、体裁のために離縁もせず、自由を与えず、囲い隠し。
榊家は、叔母様をその大きな屋敷の中に長く閉じ込めた。
だから、俺の母さんが亡くなった時ですら、叔母様は、葬儀に参列できなかった。
実の姉の葬儀なのに、だ。
精神疾患で外出もままならないのでと、体の良い理由がつけられ。
榊家の使いが榊征一の名前を記した香典を持ってきて、すぐに帰ってしまった。
その場に居合わせた当時小学4年生だった俺は、叔母様の具合はそんなにも悪いのか、と、純粋にも榊家側の建て前を真に受け。
母さんの忌みが明けたらお見舞いにいかせてくれ、と、由佳里ちゃんにせがみ。
少し困ったように微笑むばかりで頷いてはくれない由佳里ちゃんを、不可思議な思いで見上げていたっけ。
叔母様と会ったのは、多分、俺が幼い頃に2~3回ぐらい。
遠く、曖昧な記憶を辿れば、母さんに似たその面影をおぼろげに思い出せて、美しい遺影を見れば、ああ、こんな女性だった、と、確認できる程度の薄い関わり。
もっと沢山会って、言葉を交わして、甥として叔母様に寄り添えたら、と、思っていたけれど。
ついに、それは叶わなかった。
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