第4話

「………そういう設定を無理矢理押し付けられて、追いやられてるって事か」







あの杉野とかいうオッサンは体裁気にして、修哉を遺族席に着かせたがっただろうけど……。






修哉自身が頑なに拒んで、喪主である榊家当主はそんな修哉に無関心、ってトコか……。







「……そう思いたければ好きにしろ。俺は、こんな茶番、どうだっていい」






そう言って、俺から顔を背けると、修哉はツカツカと教会の出入り口へと向かって歩き出した。






「あ……おい、待てよ」





声をひそめた俺の制止なんか、何の効力も無く。





修哉の姿は、ゾロゾロと列を成して入り込んでくる弔問客達の流れに逆らい、教会の外へと消えてしまった。














秋の澄んだ青空の下。







整備された公園のような教会の構内の、そのアプローチにそって出来た長い喪服の列を横目に、修哉の後姿を追って駆けていく。







すると、程なくして、教会に併設された幼稚園との境に設けられた遊歩道のような小路に出た。







その路地の先を行く黒い人影を追いかけながら、俺は、心の中で修哉の言葉を反芻していた。







こんな茶番……か。






……ああ、本当に。







榊家の連中にとっては、とんだ茶番だろうよ。















叔母様が敬虔なキリスト教徒だったから、と、葬儀は榊家一族御用達の大きな葬祭ホールではなく、郊外の教会で執り行われ。






そのご遺体は、榊家の菩提寺の墓ではなく、隣県に新設されたばかりの、宗派を問わない霊園墓地に埋葬される。






代々続く榊家本家の墓に入らない。






それは、榊家本家の正妻の扱いにあるまじき、異例の措置だ。







そんな事を体裁良く世間に納得させる為には。






故人の信仰心を尊重する、というキレイゴトが理由でなければならなかった。

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