第3話

「おい、なんでココにいんの?」






「………」






「こんなトコで、何やってんだよ?」






「………誰?」






誰……って……。






ようやくこっちを向いたかと思えば、ソレかよ……。





俺の事、忘れてんの?






ああ、もう……先が思いやられる……。







苛立ちをぐっと飲み込んで、俺は、修哉の冷めた目に視線を合わせた。






「お前の母方の従兄、って言えば分かる?」






修哉の母方の従兄は、俺1人しかいないんだ。






たとえ俺の顔を覚えてなくたって、さすがに分かんだろ?






「……ああ、深山のお城の、王子様か」






微かに鼻で笑うと、修哉は皮肉めいた声音で独り言のように呟いた。






「感じ悪っ。……まあいいや。……とにかく、なんでココなわけ?……お前は叔母様の息子で、本家の長男だろ?」






「だから何?」





何?……じゃねぇ!





「いや、だから、お前がココにいたら明らかに異様だ、って言ってんだよ」





遺族が揃って前の方の遺族席で並んでんのに、叔母様の息子がなんで、こんな教会の後ろの隅っこに立ってんだ!






おかしいだろ?






つか……なにより弔問客の手前、コレじゃマズイだろ?






「気分悪くて今にもぶっ倒れそうだから、目立たないところにいる……」






修哉はつまらなそうにポツリと応えた。






確かに、気分は良く無さそうだけど……。






母親がこんな事になって、気分がいいはず無いけど……。






だからって、こんな場所に喪主の息子が立ってていいはずもない。






誰が、こんな事させてやがる?






分家の奴等か?





まさか、喪主当人じゃあるまいな。

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