Chapter1

第2話

高い天井に、パイプオルガンの音色が響き渡り。





黒衣に身を包んだ人々が列を成して、祭壇に白い花を手向けていく、その、しめやかな葬送の儀式のさなか。





従弟の榊修哉は、黒いスーツに身を包み、ステンドグラス越しの陽光を避けるかのように影に紛れ、教会の1番後ろの壁際でたたずんでいた。











その顔は、酷く冷めていながら。






ひとたび目が合えば、たちまち魂を抜かれてしまうのではないかと思うほどの麗容さ。






暗がりにひっそりとたたずんでいる今は、禍々しい存在のように見えるけれど。






あと数歩前に進み出て、教会の高窓から差し込む光を浴びさえすれば……。







神が天界より遣わした天使のようにその姿は眩しく。






神々しく、清しく見えるに違いない。





その端麗な容姿は、沢村方の……つまり、叔母様やうちの母さんのそれとは類が違う。






修哉の父親の……榊家の血筋の隔世遺伝に因るものだろうか……。






きっと、榊家側の先祖にとんでもない美男美女がいたんだろう。






まあ、ソレを言うなら、沢村家側の血筋に於ける隔世遺伝の可能性だって、あり得るわけだけど……。






少なくとも、母さんの幼少の頃のアルバムの中には、今の修哉に強く遺伝的影響を残したと思われる親族は見当たらない。










それにつけても。






なんなんだ。






こいつの、この、荒んだ感じは……。







ガキん時はもう少し純粋で無垢な印象だったのに。






ちょっと見ない間に随分と擦れて、俗っぽい雰囲気を出すようになったもんだな……。






妙に大人びてる上に、仏頂面だから……そう感じるだけか?






想像していた以上に、背、伸びてたし……。







いや、でも……。






こうして近づいて見てみると……






「俺と……そんなに変わらないな……」









……じゃなくて……っ!







修哉の見た目の事なんて、今はどうでもいいんだよ。






問題は外見じゃなくて。






修哉が今いる、この場所だ。

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