第19話

私は握りしめていた箸をトレイの上に置いて、視線を生姜焼き定食に落とした。





「あ、その、幽霊というか……オカルト現象の経験があったら……ちょっと相談に乗って貰おうかな~なんて……」




うう……言いにくい。





なんか凄くバカなコトを口走っているような気がしてくる。




「相談~?無理だよ、私、霊感ないし。それっぽい経験っていっても金縛りぐらいだし」




太田主任は、苦笑を浮かべて首を傾げた。




「金縛りなら私もあります~」





すかさず、矢野ちゃんが小さく挙手をする。





「あれ、苦しいんだよね。耳鳴りから始まって、息苦しくて」




金縛りに遭った時の事を思い出したのか、太田主任は眉間にしわを寄せて苦しそうに言葉を繋いだ。





「耳鳴り…ですか」




つい反応してしまう。





だって、私も、あの時耳鳴りを感じていたから。





「でも、耳鳴りなんて、なんでもない時でもある事だし……全部霊現象ってわけじゃないよね、多分」




「金縛り自体、身体が疲れている時にも起こるっていいますもんね」




矢野ちゃんの明るい補足に、私は諦めのため息をついた。





「そっか……なるほど」





そうだとしたら、昨日のアレが心霊現象だとは言い切れない。




単に、私が疲れていただけかもしれないし。





本当に脳の病気を発症してしまったのかもしれないし。

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