第18話

「で、なんでいきなり幽霊の話?」





興味深そうに私の顔をのぞき込み、太田主任が問いかけてきた。





銀縁眼鏡の奥の知的な両目に見つめられ、私は思わず言葉に詰まってしまう。





相談を持ちかけようと思い立ったまではいいけれど、昨日のあの現象をどう説明するべきかまでは考えていなくて……。





席に着いて「いただきます」と手を合わせた直後に「主任は幽霊って見たことありません?」なんてなにげに切り出しちゃったのは、やっぱり軽率だったかもしれない。





本当は、まだ、昨日の出来事を相談して良いのかどうかも迷っていた。





寝ても醒めても頭から離れない、あの現象。





社員食堂という現実的な空間にいる今だからこそ、まるで夢だったかのように思い出されるけれど。





何度も確かめて。




何度も掌で感じて。




何度もこの耳で聞いた。




ストーブのスイッチを入れると現れて、スイッチを切ると消える。





あの光りの暖かさと、スイッチを消そうとする度に聞こえる『消さないで』という声は、間違いなく現実の現象だった。




それも、私の頭が病に侵されていなければの話、だけれど。

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