第15話

それにしても……。







私は力なく球体を見つめた。





いつの間にか耳鳴りは消えているのに、目の前の球体はまだフワフワとたゆたっている。





幽霊のクセに、なんか妙に明るくて……あまり怖くない……。




いや、こんな非現実的な現象を目の当たりにして、そう感じている私の頭が既に、かなりヤバいんだろうけど。




でも、何故か、おどろおどろしい気配は全く感じない。




それどころか…。





なんか……。





親しげに…近づいてきてるんです…けど…?





球体は曖昧な輪郭をじわじわと広げながら、私の目前に迫りつつあった。




「ぎゃ!」




小さな悲鳴を上げて身をすくめた私の肩に、ふわん、と、温かい何かが触れる。




儚いのに、明らかに空気とは違う…未知の感触。




無重力の環境で宙に浮かぶお湯の球体を触ると、丁度こんな感じなのかもしれない。




なんて……心地良い暖かさ。




こんなに近くにいるのに、その光は、痛いとか、熱いとかじゃなくて。





穏やかで。





柔らかくて。




まるで、護られているみたいな…安心感。




もしかして、これは、幽霊とか、呪いとかではなくて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る